2011/01/17

子どもが育つ森──県立四季の森公園

2011.1.3-5
【神奈川県】


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 JR横浜線がほぼ鶴見川沿いを走る小机駅〜鴨居駅の間には、この季節でも青々とした葉もの野菜を栽培する畑が広がります。
 ここも農業専用地区なので、平坦地をのんびりと歩きたい方にはオススメの散歩道です。
 近ごろ横浜の農地を歩くようになり、これまで聞き流していた天気予報の「低温注意報」の発表に、「畑のほうれん草は大丈夫だろうか?」と、身近に感じるようになりましたから、いい見聞になっているようです。
 今年の冬は寒いので、作物の管理には苦労されていることでしょう。


 その途中に、カモメの仲間らしい海鳥(小柄なのでユリカモメと思う)の群れる川岸があり、餌づけする人がいて河川敷も鳥の足跡だらけですから、この辺りで生活しているのかと思っていたら、ユリカモメは昼間、湖沼や河川付近で群れて過ごし、夜は海に戻って船などをねぐらとするそうです。

 付近では野鳥の餌づけが盛んなようで、鴨居駅から「ららぽーと横浜(ショッピングセンター)」方面に架かる歩行者専用橋での餌づけは、周辺の名物(?)なんだそうです(個人的な趣味らしい)。
 以前からカモが多くいるので「鴨居」とされたそうですから、餌づけしなくとも人と鳥が身近に接していた地域になります。
 現在でも鳥が集まるのですから、流れが緩やかで、エサの豊富な場所という条件を満たしているのでしょう。

 確かに田園風景の中に野鳥の集う川が流れる絵ではありますが、畑の先には崖っぷちに建てられた「無理やりマンション」が並んでいたりするので、新・旧の土地利用がせめぎ合う最前線と言えそうです。
 もう少し上流の中山駅手前で分かれる支流の恩田川が、横浜線沿いを町田方面に向かうので、今回からその恩田川沿いを歩こうと思います。


県立四季の森公園(Map)

 最寄りのJR横浜線中山駅では、2008年に横浜市営地下鉄グリーンラインが開業しましたが(日吉〜中山間)、今後の延伸計画には〜二俣川〜東戸塚〜上大岡〜根岸〜元町・中華街までの構想があるそうです(反対側は日吉〜鶴見)。
 横浜市の夢の大きさには驚かされますし、第2の東京を造ろうとしているのか? とさえ感じられます。
 その中央を南東〜北西方向に走るJR横浜線に接続する都心方面からの経路として、東神奈川(京浜東北線)、菊名(東横線)、新横浜(東海道新幹線、地下鉄ブルーライン)、中山(グリーンライン)、長津田(田園都市線)が実現しましたが、そこにまた相鉄線を新横浜に接続させるのですから、この総力戦は、首都近郊における都市計画の手本とされるかも知れません。
 これまでローカル線の印象が強かった横浜線には、山手線などからの「お下がり車両」が回されてきましたが、ピッカピカの車両が走る日も遠くないのかも知れません。

 公園の展望台へと続く階段で、子どもたちが「グリコ」(じゃんけん遊び)をしています(説明はいりませんよね?)。
 その遊びについて調べましたが、地方による違いはなくどこも「グリコ」と呼んでいたようで、ルーツも不明です。
 江崎グリコの戦略と考えると、「グリコ」の発売開始は1922年(大正11年)ですが、アーモンドチコレートの発売が1958年(昭和33年)なので(チョコレートは東京凮月堂から1878年(明治11年)に発売されている)、その当時の仕掛けにも思われますが、でもパイナプルは?
 そこで思い浮かんだのが、チョコの中にフルーツ味が隠れていたルックチョコレートですが、それは不二家でした。
 結局不明ですが、「ひとつぶ300メートル」という印象深いコピーと、当時の子どもたちに人気の食べ物のゴロ合わせから生まれたようです。
 それにしても、書いただけなのに口の中が甘ったるくなってきました……


 上写真付近には以前、不動の滝とされるわき水があったそうで(現在は細々とした流れ)、「この場所に、竜王の化身で水の神様であるクリカラ不動尊を祭った」の案内書きを目にしてから、「それはクリカラモンモン(入れ墨)と関係あるのか?」の疑問を抱きながら、悶々と歩いていました……
 帰って調べると、「俱利迦羅(くりから)」は不動明王の化身「俱利迦羅竜王」であるとのこと。「もんもん(紋紋)」は紋様の意味なので、「クリカラモンモン」は俱利迦羅竜王の紋様という意味であり、その絵柄が背中一面に彫られた入れ墨の意味に使われるようになったそうです。
 公園で「クリカラ」の文字を見た瞬間、映画『さらば愛しき大地』(1982年)で根津甚八が背負っていた入れ墨がイメージに浮かび、頭の中を占領されましたが、あれが俱利迦羅竜王であったかは不明というか、もう十分です。

 不動明王とは密教(空海の教え)で大日如来の化身とされ、日本ではとても親しまれる信仰対象なので、各地のお不動さん(不動尊)にある「水」に接した際には、この「クリカラモンモン」の記述を思い出して下さい(?)。


 公園内で最も広い谷戸(谷状の地形)には、アシ原が広がっています。
 わき水も豊富なので水田も可能かと思うのですが、維持管理に手間が掛かることや、わき水の水質などの問題があるのかも知れません。
 でも、案内板写真にある青々と茂るアシの姿を目にできる場所は少ないと思うので、そんな季節に見てみたい光景です。

 姿は目にできませんがどこの森からも、コツコツ木を突つく音や、枯葉を掘り起こす音などが聞こえ、そんなざわつき感が鳥たちを身近なものに感じさせてくれます。
 写真からは伝わりにくいと思いますが、急斜面の迫った土地を開発業者が敬遠したおかげで(?)、このような環境が残されたという気がします。
 斜面だらけの公園ですが、散策用の階段の下にある「136段あります。お気をつけて」などの看板が励みになるのでしょうか、そこをウォーキングコースとしている方が多いことに驚かされました。
 坂道や階段を上がることは、平地を歩くよりも心肺機能が鍛えられると思うので、習慣にできればしめたものという気がします。
 伝わっているかも知れませんが、わたしもこの「鶴見川&里山を歩く企画」前までは坂道を避けたい方でした。
 坂を登ると同世代の平均以上にゼイゼイすると思いますが、少し慣れたせいか気分的には「苦痛」が軽くなったような気がします……


 枯葉には事欠かない地なので、枯葉ソリができそうな場所もあります。
 ワンパクな遊びをさせないためか、幼少者向けのためか、公園側が「新鮮な枯葉を集めた枯葉プール」(意味は伝わります)を用意して、安全な枯葉遊びを確保してくれます。

 何が楽しかったのかは思い出せませんが、ガキ時分にはよく林で遊んだ印象があります。当時は林の中をウオーキングする人もいませんから(その代わり変質者と称される人には要注意です)、自分たちの世界に浸れる場所だったのかも知れません。
 そこから何を与えてもらったのかも明確に表現できませんが、もし自分に子どもがいたら森の中へ連れて行きたいと思ったことでしょう。
 そこで何を感じるかは、その空気にふれてみなければ分からないし、人それぞれ違って当たり前ですが、そこで受けたインパクトを忘れないことが重要なのだと思います。

 何これ? と言わないでよ。当人には
 カワセミの姿をとらえた!
 という写真なんですから……

 池の対岸に大きな望遠レンズを据えた人たちがいるので、この辺りにカワセミでもいるのか、とアシ原をのぞいてみると、イメージ通り枝の上にカワセミがいるではありませんか!
 野外で目にしたのは初めてなので、一応は撮っておかねばというものですが、わたしのレンズではとてもとても撮れるものではありません(これも撮った写真を拡大しています)。
 俊敏なイメージがありますが、獲物を探す時(?)は結構じっと動かない鳥であることを知っただけでも、とてもうれしい出会いです。
 しかし裏返すと、わたしにも出会う機会があるのですから、希少さは失われたと言えるかも知れません。
 それを、都市近郊の自然が整備されてきたととらえるか、本来の生息地から追われてきたと考えるか、もしくは彼らが適応したとするのか? 受け止め方でよろこびの度合いも変わってきそうですが、今回は素直に「初めての出会い」をよろこびたいと思います。


 畑の中に「春の花を育てています」の看板が見えました。
 気分はこれから冬本番(年明けから冬本番の寒さが始まるとは、油断を突かれました)ですが、春の便りは、もうカレンダー2枚程度の期間で届けねばならないのですから、準備はすでに進行中です。
 これまでの「春待ち気分」は、木々のつぼみから感じていましたが、こんな新緑の芽(菜の花?)が育つ様子を眺めていると、日々の成長と共に気持ちが明るくなりそうで、春待ち気分にはうってつけという気がしてきます……

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