2010.11.13
【神奈川県】
より大きな地図で 鶴見川&里山 を表示
今回もまだ港北ニュータウン付近をうろついていますが、横浜市が都市開発の目標とした「住居・職場・農業が一体となった街作り」の、職場・農業の現場を見て歩こうというのが今回のテーマです。
川和富士(かわわふじ)(Map)
港北地区に3座現存する富士塚のひとつで、規模としては最も大きく(すそ野が広い)高さは15m程度あります。
ニュータウン建設により公園に移設されますが、鶴見川方面の谷地形を見下ろす視界の広がりには開放感があります。
その先にあるはずの富士山の姿が見えれば言うこと無いのですが、雲がかかっています(黄砂のせいかも)。
最寄りの横浜市営地下鉄グリーンライン都筑ふれあいの丘駅付近からは、この富士塚頂上が舞台のように見えます。
上に立つ人影がはしゃいでいるように見え、低いながらも頂に立った時の気分の良さとその振る舞いのわけを理解できる場所です。
富士山の「砂走り」ではありませんが、上写真下の子のようにそり滑りのコースとされている場所があり、そこだけ草がはげています。草の上を滑ればもっと爽快と思ったら、多摩川土手に滑りに来てください。
時折散歩する土手沿いは雑草(花を咲かせる草もある)が伸び放題なので、年に2〜3回草刈り作業が行われます。
遊歩道のある場所が対象としてもかなりの面積があるので、かなり費用がかかると思いますが、草が伸びると歩道が歩きにくくなるので、必要と感じる行政サービスです。
そんな土手をグラスそりの遊び場にすれば、双方にメリットがあると思ったりします。
ただ、お母さんは「また草の種をいっぱい着けてきた」とため息かも知れません(あれ繊維に絡まるような構造なので、洗濯しても取れないんだよね)。
背後の鉄塔には「橋本線」のプレートがありました。ここから相模原市橋本までだと結構距離はありそうですが、橋本方面の工場がお得意様というネーミングなのかと思ったりします。
サカタのタネ 本社(Map)
港北ニュータウンが属する都筑区では、南部の鶴見川沿いは以前から工場の多い地域でしたが、ニュータウン開発と共にスタートした企業誘致により、企業本社や研究所の転入件数が増え、横浜市のもう一つの目標である「職場」が充実しつつあるようです(自治体の見解)。
都筑区に本社を構える企業には「AOKIホールディングス」「パナソニック モバイルコミュニケーションズ」などもありますが、横浜市のもう一つの目標である「農業」とベストマッチな「サカタのタネ」本社があります。
この会社は、1913(大正2)年創業「坂田農園」(横浜六角橋)に始まり、苗木の輸出入を軌道に乗せるも戦争で断念。そこから種苗業へ転換し、現在では「花と野菜の研究開発」を主業務とします。
上写真のような緑化事業(コンクリートの上で植物を育てる)も行っており、「緑の多い町でもっと植物を育てましょう」などと、いまどきは何をやっても好感度アップにつながってしまう、実にうらやましい会社です。
あこがれの職業というものは「電車の運転手」「プロ野球選手」から、年齢や社会情勢によって変化しますが、いまどきでは「グリーンのプロ」というのも、実にカッコイイ職業に思えたりします。
「緑から食物まで」を研究するのですから、人類の未来が彼らの双肩にかかっている、と言えるかも知れません。
展示温室のグリーンプラザは一般開放されていて(土日祝休館)、植物園の温室が持つ「植物図鑑」的な役割とは違い、ここはガーデニングや家庭菜園の「見本ディスプレイ園」という格段にキレイなショールーム的温室で、関心のある人が見たら思わず育てたくなるような展示なんだと思います。今度是非見学してみたい施設です。
自治体、会社、住民のいずれにとっても相乗効果を生み出す、非常に珍しい例と思います。
ド素人ですが「雇ってくれないかなぁ〜」とあこがれてしまいます。
農業専用地区(Map)
仲町台駅から横浜方面に向かう地下鉄ブルーラインが地中に潜った少し先で視界が一気に開けます。
この一帯が、横浜市の目標である「農業との共存」を実現した農業専用地区になります。
ビニールハウスなども点在する一般的な農地ですが、戦略的な「横浜ブランド農産物」として、ホウレンソウやコマツナなど軟弱野菜に力を入れているとのこと。
軟弱野菜とは耳慣れませんが「収穫から急速にいたみはじめる野菜:青物」のことで、消費地近くでの生産が必要とされる近郊農業向き作物になり、自治体では「小松菜の生産量は日本一」と鼻高々です。
横浜市の農地整備事業では、住宅地の一画にポツンと農地が残されている様な土地と、市が事前に購入しておいたこの周辺の土地と交換することで、住宅地と農地の区画整理を目指しました。
ここなら周囲に建物がないので、日当たりを心配せずにすみますし、回りも農家だけですからマイペースで精を出せると思います。
先祖代々の土地も大切ですが、大都市近郊では宅地と農地は分けられていた方が互いに落ち着けるようにも思えます。
以前は農家の家の周囲に農地があるのは当たり前でしたが、そんな形態の変化を農地の都市化(?)というものかも知れません。
上写真中央奧に鉄塔が林立していますが、その辺りが以前名称だけ登場した港北変電所になります。
そんな光景も、都市近郊の田園風景らしさと言えそうです。
大熊町(Map)
農業専用地区に沿って丘陵地を下ると、となりの支流である大熊川に至ります。
今回鶴見川を歩くに当たり、特に意識してない川だったので、ここで出会えなければ素通りするところでした。
ここには「手つかずの農村集落」が昔のままの姿で現存しており、まるでガキの時分にタイムスリップしたかのような光景に、ちょっと鳥肌が立ちました。
曲がりくねったあぜ道に沿って家の敷地を囲う生け垣が続き、その庭では飼っているニワトリが当たり前のように鳴いてますし、落ち葉たきの煙があちこちから上がっています。
右写真の火の見やぐらは現役のようで、近ごろ見かけなくなった赤く丸い電灯(消防署や交番にあった電灯。右写真で判別できるか?)に目を引かれ、畑の道でペースダウンした歩く速度が、一段とスローになりました。
横浜市の土地利用図を見ると、ここも農業専用地区に含まれるようですが、ここの場合は「農家の家並み保護地区」とすべく、あえて港北ニュータウン計画の網をかぶせ、なし崩し的な開発から守ろうとしたのではないか、とすら感じられました(ここを舞台に映画の1本も撮れそう)。
だとしたら横浜市もやるもんだと思うのですが、果たして?
忘れかけていた記憶をたどり断片をつなぎ合わせるうちに、また別の断片がよみがえるので、キリのない不毛な作業になるのですが、結局懐かしむだけでは何も生まれないと理解しているためか、とても切ない気持ちにさせられます。
表現としては「胸がキューン」で通じるのでしょうが、「締め付けられる」「ときめく」ではなく「ざわめく」あたりの表現でいきたいと思うのは、オッサンが「キューン」じゃ無いだろうと意地になるからです……
上写真は出来の悪いウリ(?)を畑のあぜに並べて、土盛りの一助としているようです。
「むかしのまま」という表現を褒め言葉に使いたい地域では、(お約束のように)無邪気な表情で駆けだしてくる若いお兄ちゃんの素朴な姿が見られ、角張った車高の低い車が大きな音を立て走ってきますから、タイムスリップでないとしたら「ここはどこの田舎?」となるのでしょう。
しかし、どっこい生きているローカルな生活感が、そんな「個性」を育てていると思える集落ですから、一杯やりながらお話をうかがいたいところです。
懐かしがるばかりではなく、現在の生活で生かせる知恵や文化を取り込めれば、また新しいモノを生み出すヒントになるかも知れません。
初めて訪れた夕暮れ時のバス停で、ひとりベンチに座る心細さは次の瞬間、旅行で初めて訪れ右も左も分からない土地で感じる「どこへ連れて行ってくれるのだろう」というワクワク感に変わります(この瞬間がたまらなく好きです)。
やってきたバスの行き先が「鶴見」(大倉山、新横浜経由)という身近な地名であることから、少し足を伸ばせば横浜市にはまだ「未踏の地が残されている」と感じ、期待感が膨らんできました。
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