2010/11/01

鉄塔北浜線──大倉山、綱島

2010.10.23
【神奈川県】


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大倉山公園(Map)

 東横線大倉山駅から5分ほど急坂を上った山の上に、梅林で有名な大倉山公園があります。
 右写真はその中心にどっしりと構える大倉山記念館で、地名の由来となった「大倉精神文化研究所」(実業家大倉邦彦が設立の研究教育施設。旧大倉財閥とは別)を、横浜市が買い取り現在は公民館的な施設とされています。
 蔵書が閲覧できる図書館やホールがあり、この日も音楽会の演奏が聞こえてきます。施設に駐車場は無いので、楽器を持って急坂を上ってきたのだろうか?

 竣工当時(1932年:昭和7年)は田園風景が広がる丘の上に、このように大きな建造物を作ったのですから、理念が崇高なのか(怪しい存在)? 単なる変わり者か? とのうわさで持ちきりだったと思われます。
 彼は同い年である東急電鉄創業者の五島慶太からこの土地を買い、「世界と日本と個人は三位一体」の考えを現実化する空間を作ろうとしたそうです。
 周囲は仰天して、皆「大倉山」と指し示したことでしょう……

 取っつきにくい印象はありますが、現在も継続的に発表されている論文等を読むと、まじめに取り組む文化人類学的な視点に興味を引かれるところがあります(例として「港北区の歴史と文化」など)。
 先駆者というのはどんな分野でも「尖っている」と見られるようです。


 建物の設計者である長野宇平治は、北海道銀行本店、日本銀行本店増築などを手がけた古典主義建築の第一人者で、この建物の様式は、ギリシャ神殿風の西洋的外観と東洋的な木組み内装を組み合わせた、クレタ・ミケーネ様式(聞いたことあるような、ないような)というそうです。上写真は吹き抜けの天井部分を見上げたところ。
 部分的に切り取ると、何となくミスマッチにも思えますが、存在感には揺るぎのない落ち着きがありますし、ドア越しに聞こえてくるクラシックの演奏が、いかにもふさわしく感じられる空間です。


鉄塔山(Map)

 東横線綱島〜大倉山駅間の車窓から、いったい何本鉄塔が立っているんだ、という「鉄塔山」が見えます。
 一度近くで見たいと思っていましたが、これがなかなかたどり着けない……
 小高い丘陵地に立つので、目標は見失わないのですが、そこまでの道が見つかりません。
 横浜は丘陵の町ですから、宅地開発が可能な場所は急傾斜地でも残さず削りますし、削った土地は余すところ無くキッチリと宅地利用され、息が詰まるほどがけや隣接家屋に迫った家を建てますから、路地や抜け道がまるでありません。
 そのため、行き止まりや袋小路ばかりで思った方角に進めず、何度も上り下りさせられ草臥れ儲け(くたびれもうけ:とはこんな字なのかという紹介です)ばかりで、歩いても楽しくない地域なのであきらめました(右写真は袋小路を引き返した時のもの)。

 鉄塔北浜線とは、京浜変電所(相鉄線いずみ野駅付近)から港北変電所(横浜市営地下鉄仲町台駅が最寄)までをつなぐ送電路になります。
 「線」ですから鉄塔を指してはいませんが、この表記は映画『鉄塔武蔵野線』(1997年)にならいました。
 本件を調べていると「鉄塔・送電線ウォーク」など、関連サイトやブログがいくつもあり、ライフワークのようにしている方がいることに驚かされます。
 山間地は大変ですが、市街地では道に迷っても目標を見失う心配もなく、とても歩きやすいと思うので、チャレンジしてみては?(ここはNG)


 そんな専門家のサイトを読みここが、複数の送電系統が集まり分かれていく、ハブやインターチェンジのような場所であることを知りました。
 そんな場所では、複数の路線が同じ鉄塔に相乗りして設備を有効活用しているので、プレートにはメインとされる路線名が記されるようです(各鉄塔には、路線名とその何番目の鉄塔に当たるかを記した看板が付けられている)。
 この付近では「北浜線」がメインのようなので、プレートに名称は見られませんが「北旭線」(港北〜旭変電所間)、「大倉山線」(港北〜綱島変電所間)、「北島線」(港北〜綱島変電所間 大倉山線とは別ルート)、「浜岡線」(京浜〜旭変電所間)が鉄塔を共有しています。
 もっとすごい場所はあるかも知れませんが、この過密ぶりには驚きました。また、路線の数だけ変電所があるわけで、この付近には3つあるようです。

 変電所などめったに目にしないと思いますが、これだけの密度であるということは、近くに大量の電力を消費する工場や住宅密集地などがあるということなのでしょう。
 綱島付近には工場も多いが(Panasonic綱島工場はまだ健在?)住宅も密集してますから、鶴見川の水質に影響を及ぼしているのは工場だ、と決めつけるのはやめておきましょう……

 これだけの送電線が天かけるわけですから、電磁波が降り注いでくるのでは? と思ってしまいます。
 数値としての目安は「2ミリガウス以下」とされるそうですが(研究中の仮定レベル)、そんなの庶民には分かるものではありません。
 50メートル程度離れれば直接的な影響は無いようでも、送電線の高さはそれほどありません。
 そのためか都心の住宅地では、巨大な電柱のような高い鉄塔に置き換わっている様子を目にします。
 それが電磁波対策だとしたら、対応を急ぐ必要があります。

 父親の実家近くに送電線が通っており、健康被害に対するものかは不明ですが、迷惑料的に「むかしから税金が少し安い」という話を聞いたことがあります。
 そりゃ、何も無い場所と同じ待遇だったら住みたくない気もしますが、今どきは「でもその分、地価はお安くなってます」の売り文句に気持ちが動いちゃうのでしょうか?


バリケン島(Map)

 ここは綱島駅近くの、東横線と綱島街道の橋の間にある「バリケン島」と呼ばれる中州です。
 バリケンとはカモの仲間で、南米で家禽(かきん)とされる鳥を食用として日本に持ち込んだものの、事業化には至らなかったようです。飛ぶことができるので、逃げ出したと思われる個体が各地で見られるそうです。
 この地のバリケンは2006年に死んだそうですが、2003年「タマちゃん騒動」(ここではツルちゃん?)では、東急線の橋脚がタマちゃんの休憩場になったりと、野生生物には思いのほか居心地のいい場所なのかも知れません。
 おかげで川辺への関心が高まり、定期的な清掃活動〜水生生物観察会が開かれているそうですから、鶴見川をあまりバカにしていると怒られてしまいます……

 この少し上流で支流の早淵川と合流するので、次回はその支流沿いを歩こうと考えています。

P.S. 綱島の「北海道ラーメン 壱源」(渋谷などにもあるチェーン店)で何度か食べたことがあり、今回も楽しみにしていたのですが店じまいしてました。こんな時の悶絶感とは、何を持っても静めることはできないものです……

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