2010/03/01

ほのかな早春の香り──三渓園

2010.2.20
【神奈川県】

 2月の東京は、雪のちらつく日が多かったので、寒さを一層印象づけられましたが、下旬には「記録的な暖かさ」が訪れ、桜も咲きそうな陽気に、ひと息というか、一汗かいたのではないでしょうか。
 季節としてはまだ早春ですから、今回のテーマは梅になります。


 三渓園(Map)

 三渓園(横浜市本牧)の紹介はこれで3回目(紅葉)になります。
 神奈川県には、このように大きな庭園施設は皆無ですし、季節ごとの手入れも行き届いているので、機会があれば足を運んでしまいます。
 でも、本牧一帯はとても不便な場所で、横浜の陸の孤島と言われたりします(クレイジーケンバンドの横山剣は「本牧は車社会ですから…」とも)。
 みなとみらい線の延伸計画もあるそうですが、反対運動等でもめているらしく、凍結状態だそうです。どうするんでしょう……


 梅の名所は数々ありますが、ちょうど電車の中刷り広告で「観梅会」なるものを目にしたので、誘われるままに足を運びました。
 梅の楽しみ方には、桜のように「こぞって満開を迎える」迫力とは違った「風情を味わう」楽しみがあると思います。
 花見の対象とされる花には歴史的変遷があり、平安時代初期まで梅だったものを、平安貴族が桜に切り替えていったそうです。
 時代のイメージとしても、奈良時代までが清らかな「梅」とすれば、平安時代は華やかな「桜」に例えられますし、江戸時代以降のお祭り騒ぎの「ソメイヨシノ」への変遷は、とても納得できる印象があります。

 ここは、明治時代に製糸業で富をなした原富太郎(三渓)の邸宅でした。
 日本初の器械製糸工場である富岡製糸工場(群馬県富岡市:教科書で習いました)を、官営→三井家から受け継ぎ富を得ます。

 嫌みな表現をすれば、金にものをいわせて関心のある古い建築物を買いあさったと言えますが、現在でもきちんと整備され使用に耐えていますから、建設に携わった当時の職人や、持ち主も喜んでいると思われます。
 茶室や別荘を買い取る程度なら分かりますが、仏塔(三重の塔)まで移築するのですから、ちょっとレベルが違います。
 また、そんな建築物をきちんと据えられる広い土地を用意できるなんて、庶民感覚とは別次元の世界です。


 上写真は、織田有楽斎(うらくさい)によると伝わる茶室です。彼が建てた「如庵」という茶室(現在愛知県で保存)は、国宝なんだそうです。
 有楽斎は織田信長の弟(信長は次男、有楽斎は十一男)で戦国武将ですから、武勇伝も伝わりますが、千利休に茶を学び、独自に開いた流派(有楽流)の祖として知られています。
 「織田家」のひびきからは、茶道の家元よりも、アイススケートの織田信成選手の「やんちゃさ」の方が、しっくり感じられる気がします。

 三渓園の素晴らしさは、大きな建物(古くからの木造と思う)は会議・パーティ・結婚披露宴に、上下写真のような茶室は小規模な茶会に貸し出すなど、移築した建築物を現役活用しているところにあります。
 上写真の沓脱石(くつぬぎいし)脇に、草履等が見えると思いますが、この室内では茶会が開かれているようで、中から笑い声が聞こえてきます。
 そんな談笑も、破顔を隠してくれる簡素な小屋のおかげで、上品さが感じられます。

 有楽斎の名から連想しがちな、有楽町の地名との関係ですが、彼が江戸に住んだという記録はないそうです。


 ウグイスの声は耳にできませんが、池のほとりで丸々と太ったスズメたちを目にしました。
 この辺りはエサが豊富なんだろう、と思っていたのですが、ひょっとすると繁殖の季節が近いのか? と、調べると、やはり春が繁殖期のようです。
 都市部でも多く見かけますから、巣は身近にあるはずなので、どんな所にあるのか見てみたい気もします。
 スズメは鳥獣保護法で狩猟鳥に指定されているので、捕獲可能だそうですが、食用のスズメは主に中国・韓国から輸入しているそうです。若い時分、話しの種に食べたことありますが、いい印象は無かった気がします。
 スズメのお宿(何で竹林にあるイメージを持ってるのだろう?)の話題にするつもりが、これでは恨まれそうです……

 暦では立春を過ぎた「春」になりますが、雪も舞う寒い日に漂う「香り」は、鳥や人の生命力を刺激してくれます。
 待ってましたと、飛びつきたい「衝動」にかられるのは、本能なのかも知れません(別名に春告草(はるつげぐさ)があるそうです)。
 梅の香りというのは不思議なもので、近くに花が無くても香るかと思えば、近づいてもイメージしている香りがしなかったりします。
 先日、梅の香りは咲き始めに漂う、と目にしました。
 ほのかな香りに「春への期待感」を感じられたなら、その年の儀式は済んだとされ、最初の感激はもう得られないのだろうか?(まさか免疫ができてしまうことはないでしょうが)。

 天満宮(天神様)で見かける梅の紋章は、どこか古くさくシンプルすぎる印象もありますが、実に分かりやすい図案と思います。
 初めて訪れる神社で、この紋章を見るとなぜかホッとしたりします。
 他の神社を怪しく思っているわけではありませんが、天神様への祈りには善意というか、願い事にも悪意が混在しない、純粋な信仰対象ではないかと思ったりするのですが、そんなに単純なものではないのか?

 「もうすぐ、は〜るですねぇ!」(東京でも春一番が吹きました)と、心の準備は万端なので、春の雪に気をつければ(津波も注意です)、季節だけは「春」がやってきます…… ?
 「さくら」関連の楽曲が多い昨今ですが、『春一番』的な春への期待感を込めた曲を作ってもらえると、心情的にはとても励みになると思うのですが、いかがでしょうか?

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