2011/03/28

種をまきを続けること──震災後二週間

2011.3.27

 電力不足対策の節電による暖房・照明カット、店舗の営業時間短縮等から、東京のヒートアイランド効果も失われたようで(冗談にならない状況)、春分を過ぎたのにビルや店舗、飲食店内でも凍えそうな寒さが続きます。
 六本木ヒルズの喫煙所から東京タワー方面が見渡せるのですが、東京タワーのライトアップが消える=東京が希望の光を失う(映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の心の支えを失う)ことにつながるわけで、そういう意味では「東京も被災地」と言えるのかも知れません……

 近々「タバコ出荷停止」の発表は「早めの買い占めを!」という、いまどきにふさわしくないメッセージに聞こえるので、ありがたく受け止めていいものか、情報の真意を探ろうという心理が働きます。
 数日前に驚いたのは「ビールで放射能を防ぐ」というデマというか、もうヤケクソで「飲ませろ!」的な理由で(?)ビールが店頭から姿を消したとされることです。
 今回は「発泡酒じゃダメなの?」との闘いに、オヤジの威厳がかかっているのかも知れません。お父さんたちのストレスもだいぶたまっているでしょうし……


2011.3.13
【神奈川県】


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寺家(じけ)ふるさと村

 これまで何度か訪れ、落ち着いた田園風景がとても好きな寺家ふるさと村もこの時期は畑の作物もまばらで、田んぼでは「ボチボチ準備を始めようか」という季節のようです。

 寺家ふるさと村は横浜市の北端に位置し、川崎市や東京都町田市と接する、雑木林の丘とその谷間に伸びる谷戸を保全しながら、体験農業を通じて横浜の原風景を伝えようとする地域になります。
 ナシ園や体験温室、陶芸や抹茶などを楽しめる施設までは分かりますが、ゴルフのショートコース・テニスコート等は、地元への還元的な福利厚生施設と思えます。

 今回は先日足を運んだ、丘陵の反対側にあたるこどもの国との境界を目にできないかと、尾根道に上がり奧を目指しました。
 道の途中で隣接する日体大のグラウンドから、サッカー・野球のかけ声が聞こえます。
 のんびりした丘陵地のイメージがありますが、帰って地図を確認すると尾根を境に施設が接していて、土地利用には窮屈さが見て取れます。

 結局、こどもの国は以前軍事施設だったためか(有料施設ですし)、フェンスで仕切られており近づくことはできません。
 そこに至る道には「この先行き止まり」の案内があっても、「行けるところまで行ってみよう」と考えるやからが何組もいることに、「オレだけじゃない」と妙な自信を感じたりします。
 昔の歓楽街の誘い文句である「ぬけられます」は、通り抜けようとする男を途中で引っかける罠だったそうですが、自分は「ぬけられません」の、戻れるなら行ってみようと思わせる罠に引っかかる部類だったかも知れません……


 農閑期に準備したと思われる、青々とした竹が切り出されています。
 わら干しや、網張り等に利用されるようですが、かなり以前に作られたらしい下写真の施設にも使われています。
 日当たりの良くない場所なので、わらを干すというよりは、堆肥の集積場という用途でしょうか?
 現在は使用されていないようですが、これだけの細工を施すのですから、結構重要な施設であったと思われます。
 ※竹を組んで作られるドームには、スター・ドームと呼ばれるものがあるそうです。


 地域の看板には「田おこしから刈り入れが終わるまで、田やあぜに入るのはやめましょう」とあります。
 稲が実るまでの期間は、こちらも遠慮するので田んぼには入りませんが、農閑期をいいことに結構奧までズカズカ入らせてもらいました。
 谷戸の湧水を上手に利用した、ため池や田んぼ、すぐ脇までせまる丘陵地の雑木林など、以前からの環境が残された地なので、傾斜地が近く日当たりの悪さが心配されますが、夏になれば影響はなくなるのだろうか?
 水稲栽培に向いた土地を考えれば、水が豊富で日当たりのいい平坦地に決まっていますが、そんな土地がどれだけあるのか? という現実に対する工夫の結果なのでしょう。
 それでも縄文時代の遺跡や、記録に残る平安時代から人の営みが続けられてきたことは、この地が日本という風土の中では恵まれた地域であったことを示しているのだと思われます。


 上写真は、農閑期の田んぼを遊び場にして走り回る家族の姿で、この場所は両親の経験を子どもに伝えるには格好の舞台といえるかも知れません。
 わたしもガキの時分冬場には、広々とした畑を走り回った記憶があります(台地で水利が良くないので麦畑だったか?)。
 ですが、写真同様に地面が整地されてないので「ここじゃ野球になんないよ〜」だった気がします。
 彼らのように、キャッチボールだったら可能ですし、土がやわらかいので足腰の鍛錬にはもってこいかも知れません。
 東京近郊では田畑を身近に感じる機会も限られていますから、このような環境が近くにあることはとても大切であると感じます。


 以前足を運んだ新治市民の森の稲刈り跡は、根元の部分は残されてなかったと思うのですが、ここや梅田川付近では刈跡に根の部分が残されています(機械で刈るとこうなるのか?)。
 田植えの準備で残った部分を刈るのは手間という気もしますが、春を迎える儀式のようにも見えるので、プロ野球のキャンプイン(肩慣らし)という感じでしょうか?
 そう言えば大震災ばかりに関心が向いていたので「プロ野球のオープン戦やってたの?」(春の高校野球も開会)という季節感の無さですが、関東では電力不足でナイター自粛の方向ですから(Jリーグも同様でしょう)、昼間に働く一般社会人は観戦や応援の頻度が減るので、別のストレス発散方法を考えておかないと、ストレススパイラルに落ち込む人も出てきそうです……


追記
 「飲み水が放射能に汚染される」というシナリオは、テロ行為としてもSF的であり「現実には起こりえない」と考える部類の事態です。
 そんなニュースが流れる現在は、「いったん退却やむなし」という事態を受け入れるべきとも思われます。
 しかしそんな中「どんな時でも種まきを続けなければ未来は無い」と語る農家の方の言葉に、人間の宿命・使命のようなものを感じました(この言葉は、放射能汚染の有無にかかわらず出荷停止とされた地域で、作物を処分する現場での言葉です)。
 子どもの有無ではなく、この時代に生きる者としての「責務」を果たさねば、未来の可能性は開けません。
 農家だけではなく、人として当たり前の事を、当たり前に言える人がどれだけいるのか?(地に足が着いていない者の弱さ)と考えさせられる思いがしました……
 パニクってる場合ではないのです。

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