2009/11/02

北風を意識し始めるころ──佐島、長者ヶ崎

2009.10.25
【神奈川県】

 ここしばらく、心地よい気候である「秋らしさ」を満喫していましたが、季節は進み、いつの間にか「冬の兆し」に震え始めるころとなってきました。
 先日テレビの天気予報で説明していた、二十四節気のひとつ「霜降(そうこう:露が冷気によって霜となって降り始めるころ ×しもふり)」でしたが、その次は「立冬(11月7日ころ)」ですから、もう冬支度の時季になります。
 霜降から立冬までの間に吹く北風を木枯らしと呼ぶそうですから、もうこれは「木枯らし」とされるのでしょうか?
 とても強く、寒いと感じられる北風でした……


 佐島(Map)

 ここは、先日の荒崎とは小田和湾を挟んだ対岸に位置します(陸地ではその間に、自衛隊駐屯地や林ロータリーがあります)。
 三浦半島の開発をリードしてきたと言える京浜急行グループですが、ここの丘陵地帯で大規模な宅地開発をし、「湘南佐島なぎさの丘」分譲地として大々的な宣伝をしており、京急の全駅(?)にポスターが貼られてあります。
 ここにも居住者用に、京急の急行バス(JR横須賀線逗子駅より)がありますが、まだ利用者が少ないのでマイクロバスでの運行でした。
 乗り合わせたおばさんの会話「東京から逗子までは1時間だけど、そこからが遠くてね(30分程度)」の通り、別荘なら分かるけれど、という立地になるでしょうか。


 佐島マリーナは以前から有名でしたが、利用者以外の駐車場は無いので、付近を歩けなかった印象があります。
 今回初めてバスを利用し歩いてみると、日曜日の昼時ということもあり、マリーナには関係ない人々の集まる場所を、知ることができました。
 車で食事に来る人たちが目につく、有名そうな寿司店や魚料理店があるのですが、駐車場が狭いので、店の前で交通整理をしていたりします。
 佐島漁港(上写真)の前にある鮮魚店も盛況で、店の前には車を置けないよう障害物が置いてあったりします。
 大きな港ではないので、地魚だけと思われますが、それこそ「地の味」ですから、きっと新鮮でおいしいのでしょう。
 テレビ等で紹介されたりして、知名度の高い店なのかも知れませんが、今度は是非食事目的で来たいと思っています。


 佐島の地名は島ではなく、港や分譲地のある陸地側の名称になります。
 その岬の先端に、10m程度の橋で結ばれた天神島があり、佐島マリーナや天神島臨海自然教育園は、その島にあります。
 数百m沖合にある笠島(上写真:天神島から笠島を望む)を含めたこの一帯は、ハマユウの北限自生地として神奈川県の天然記念物に指定されています(夏の花のようです)。


 案内板が無ければ見過ごしてしまう火山豆石(かざんまめいし 上写真)です。大きいモノでも直径2cm程度。
 これは、火山の水蒸気爆発で発生した噴煙内で、火山ガラスと水分が混じることで、生成されるそうです。
 最近では、雲仙普賢岳の噴火の際、雨の日に火山豆石が降った記録があるとのことです。
 火山豆石は、火口近くでしか発見されないそうなので、この地層が堆積した時代には近くに火山があったと考えられます。


 立石(Map)


 ここはご覧のように、切り立った岩と、岩場に立ちつくす松の木があるだけなのですが、天気のいい日にはこの奧に富士山が望めたり、夕日のキレイな場所なので、アマチュアカメラマンには人気のスポットなんだそうです。
 古くは、安藤広重の浮世絵に描かれ、その後も多くの画家や写真家がこの地で作品を残したそうです。
 どんな説明を聞いても、ここに富士山が見えなければ、納得できるものではありませんよね。
 富士山って、前回のようなピーカンでも見えなかったりしますから、出会うのは結構難しそうです。
 これから冬にかけての、空気の澄んだ時期が狙い目なのでしょう(台風一過の日には見えたかも知れません)。


 上下の写真は、長者ヶ崎に近い海岸になります。
 上は、スペースシャトルからの地球のように見えたりしません?(丸くないし、青くもありませんが)
 下は、ヒラメやカレイの縁側のようだ、と思っているのですが……(2枚ともカラー写真のままです)
 天気のいい日には、さまざまな色や光が見えてしまうので、曇天の日だから撮れたように思えます(それにしても2枚並ぶと暗いね)。

 湘南や鎌倉を通っている、渋滞で名高い国道134号線は、相模湾沿いにここを通って横須賀まで続きます。
 何だかこの付近には「西海岸通り」という、交通標識とは違った看板が並んでいます。どうやら、佐島から逗子にかけてのイメージアップ作戦のようです。
 むかしからとてもいい印象のシーサイドラインでしたが、商売で成功しているところは皆無だったと思います。
 でもいまでは、海を望めるおしゃれなレストランが目につくようになりました。
 立石のバス停から一緒に乗った、アラフォーの女性2人組は食事に来ていたようで、「座ったら苦しくなってきた」の会話が聞こえました(お腹周りの苦しそうな絵が浮かんじゃいました……)。
 ──アラフォーって表現は、使い勝手がいいですね。正確な年齢が分からない女性を表現する場合、おばさんと書いてしまうと反感を買うところでも、アバウトな表現ながらも受け手には「あぁ、おばさんね」と伝わりますから……(失礼)

 この一帯の難しいところは、ロケーションはとてもいい場所でも、平地が無いので建物や駐車スペースが限られてしまうということです。
 写真の海岸一帯では、海岸保全の名目で海側に人工の護岸を作り、スペースを作ろうとしているようにも見えます。
 海岸を狭めず、車窓から海の眺めが途切れない場所であって欲しいと思います。


 長者ヶ崎(Map)

 この地が、横須賀市と葉山町の境界になります(葉山って、市じゃないんですね)。
 平成の大合併の際には、三浦市から横須賀市へのアプローチがあったそうですが、メリットが無いと一蹴されたそうです。
 試算では、横須賀市、鎌倉市、逗子市、三浦市、葉山町の、三浦半島周辺の大合併があれば、政令指定都市への移行が見込めたそうですが、各自治体のプライドが強かったそうです。
 横須賀市以外には、取り立てて産業らしきものはありませんから、「静かに暮らしていきたい」という、葉山町住民の選択はとても理解できるところです。

 葉山町のホームページに、「長者ヶ崎:車を止めたくなる景色」とあるのは、とてもよく分かりますが、見るモノがない残念な場所になります。
 海側の展望は素晴らしいのですが、遊歩道は危険防止のため通行禁止になったままで、散策ができません(引き潮時のみ、海岸づたいに先端まで歩けるそうです)。
 難しいのかも知れませんが、もう少し整備すればこの地名も記憶に残ってくれると思うのですが……

 葉山町側の海水浴場には人出があるようで、一帯には海の家が並ぶのでしょう。その設備用と思われる電柱が、オフシーズンも放置されています(上写真)。


 ここは岬ですから、背後に続く尾根が風を遮ってくれます。
 ですが、ひとたび岬をかわした途端、しばらく忘れていた強風にさらされます(もう、寒いこと)。
 海水浴場の上には、海に面した駐車場があります。
 電柱の写真を撮ろうとウロウロしているとき、エンジンを止めた車内に人影のある車が多くありました。
 せっかく来たけど外は寒いから、どんよりとした海でも眺めるしかない気分も、仕方ないと思える天気でした。
 「暗い海に、パッシング……」(大瀧詠一『スピーチ・バルーン』)なんてやっていたころを、思い出したりしました……


 追記
 転覆漁船から船員を救出した横浜の海猿たちは、この時のために訓練をしていたんだと、改めて頭が下がる思いです。
 これからも、万が一の事態に備えての訓練を、お願いいたします!

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