2009/08/24

夏休みのミカタ──金沢文庫、八景島

2009.8.15
【神奈川県】

 関東地方では、お盆休みの週にようやく「夏らしさ」が訪れた、という印象があります。
 しかしそれは、北の高気圧がもたらす気候の安定であり、「高い空や雲」と表現される、秋の気配が感じられる晴天です。
 お盆前までは、蒸し暑い日が続くも「日照不足」を実感する天候でした。
 農作物の生育には「もっと日差しを!」となりますが、そのためには「猛暑日を覚悟せよ」ということになるのでしょうか……
 「夏の太平洋高気圧」はどこへ行ってしまったのでしょう?
 エルニーニョ等、地球規模での気候変動の一端を体感した夏だったような気がします。


 今回から神奈川県に戻り、三浦半島方面を攻めようと考えています。

 現在の金沢八景付近は、かつて六浦(むつうら or むつら)として名が通る、東京湾の港町として栄えたそうです。
 古くは六浦荘と呼ばれる京都仁和寺の荘園とされていて、おそらく製塩業がそのメインと思われ、塩田は明治時代まで続いたそうです。
 鎌倉時代に、鎌倉とこの地を結ぶ六浦道の開削が行われ朝比奈切通しが開通し、鎌倉の水運の要とされました(鎌倉の和賀江島にも桟橋が作られましたが、良港とは言えなかったようです)。


 称名寺(Map)

 このお寺は、現在の金沢文庫に隣接しています。
 鎌倉時代の北条氏(幕府の執権職)一族である金沢(かねさわ)北条氏が開き、一族の菩提寺とされますが、幕府滅亡とともに金沢北条氏も滅び、寺も衰退してしまいます。
 真言律宗のお寺で、以前紹介した極楽寺を起源とするそうですが、極楽寺もこの寺も鎌倉を囲む山の外側に造られています。
 奈良・平安時代の、朝廷や貴族に取り込まれてしまった宗教活動から逃れ、鎌倉仏教といわれる新しい教義を広めるために訪れたこの地でしたが、国の定めに反して戒律(仏教で守るべき道徳規範や規則)を授けるなどの行為をとがめられた過去があるために、鎌倉の山の内側には入れてもらえなかった、という思いが強くなりました(関心のある方は極楽寺の項をご覧下さい)。


 上写真手前が「反橋」、奧に「平橋」が続きますが、その掛け替え工事が2009年4月に完了し、完成後の姿を初めて目にしました。
 歴史的建造物の修復・復元工事を目にしていつも感心するのは、歴史の中で何度となく繰り返されてきた工事の度に、造られた時点の「匠の技」を学習・研究しながら、その技術を再現することで「技術が継承され」「伝統が重ねられていく」という行為の素晴らしさに、頭が下がると思うからです。
 そこに、工夫を加えることから「新たな技」というものが生み出され、それを形として残すことで、未来に託していくことができます。
 そんな現場では、どの時代でも職人が腕をふるっていると思われ、「いい仕事してますねぇ〜」と後の時代の職人が感服し、職人魂に火がついたりするのだと思われます……
 

 金沢文庫(Map)

 本施設の設立時期は不明のようですが、金沢北条氏である北条実時(ほうじょうさねとき)により収集された、和書・漢書を保管する書庫とされたのが始まりで、私設図書館としては日本では初期のものになるそうです。
 鎌倉幕府の滅亡後は、上述の称名寺が管理を引き継いだそうです。
 明治時代、伊藤博文等の力により「金沢文庫」として称名寺に再建されるも、関東大震災の被害に遭い、1930年に神奈川県の文化施設として再建されたそうです。
 展示スペースは広くありませんが、地元・鎌倉・横浜・三浦等に関するローカルな展示を、積極的に企画してくれる施設になります。

 歴史的には「かねさわぶんこ」と読まれたそうですが、現在では自治体や最寄りとなる京浜急行の駅名も「かなざわぶんこ」とされています。
 ちなみに、ガキの頃遊びで、口の両脇に指を入れて横に広げて「かなざわぶんこ」(「ぶ」が発音できないことを笑う)と言ったりしていました(そんな遊びって、各地にあったのではないでしょうか? やってみれば、その理由が分かると思います)。

 上写真(奧)が正面になると思うのですが、わたしはいつも右写真の、称名寺からつながっているトンネルから入ってしまいます。
 上述のように、以前は称名寺が主だったと思われますし、風情もこちらの方が好きです。


 海の公園(Map)

 かつては「金沢八景」(景勝地が八つある)と称され、浮世絵などにも描かれる風光明媚な地でしたが、埋め立てによってそんな情景も失われてしまいました。
 それでも、住民の要望なのでしょう、横浜市内唯一の人工砂浜が造られ、多くの人が集まる場所になりました。
 付近一帯の埋め立て(かなり広大な面積)には、市内の開発で山を削った土を使用したそうです。
 その「転用」(有効活用)が横浜市の自慢だったりするようです。
 近ごろ砂浜では、潮干狩りができるようになり、入漁料を取らないため商業的な漁が増えてしまい、問題視されているそうです。
 東京湾ですから、特に水がキレイなわけではありませんが、埋め立て以前(ガキの頃)には、ハゼ釣りや、潮干狩りに来た記憶がありますから、魚介類が生息しやすい環境であることは、むかしから変わらないのかも知れません。


 横浜フィッシャーマンズマリーナ(Map)

 予定としては、もっと奥まった場所にある、柴(しば)漁港を歩くつもりだったのですが、砂浜に目を向けている間に通り過ぎてしまいました……
 大きめの網を使った漁や、釣り船などの基地になっているそうです。

 ここは、港の出口付近にあるマリーナです。
 夏休みなのに、ほとんどの船は出ていないように見えます。夏場は昼間ではなく、涼しくなってから出かけるのかも知れません。
 夕刻から日没にかけての海って気持ちいいですものね……

 このすぐ隣に温浴施設があり、立ち寄ったことがありますが、広くないせいか、とても混雑していた記憶があります。
 施設の中に、腰掛けたイスの下から、ウォシュレットのように温水が吹き上がるものがあり、その刺激に思わず、あられもない声を上げてしまったことを、思い出しました……


 八景島シーパラダイス(Map)

 ここは、水族館やアトラクション等の施設を利用しなければ入園料等は取られません。
 なので、混雑している入口の前で引き返すこともできたのですが、ここまで来てイルカたちにあいさつもしないで帰るわけにはいかないと、覚悟して足を踏み入れました。
 しかし、水族館なのに「人間観察館」(魚たちが人の多さに驚くのでは?)のような状況には閉口させられました……
 もう、中に入ったら引き返せないほどの人の群れに、「早く出してくれ!」という状況です。お盆休みの土曜日では、仕方ないでしょうねぇ(イルカたちのショーはパスしました)。
 次回は京都同様、人出の少ない寒い季節にしようと思います。


 初めからここだけを見れば良かったんですね。
 下写真は「ドルフィン ファンタジー」という、イルカやベルーガ(シロイルカ)の水槽がある独立した施設で、混雑するもまだ身動きが取れます。

 これまでの動物写真を振り返るまでもなく、イルカの写真が圧倒的に多いことは自覚しています。
 写真を撮るにはまず、動物園や水族館で多く見ることが出来る動物であること(ペンギン、イルカ)が上げられます。
 また、比較的自然光での撮影が可能な場所で飼育されていることも、重要になります。
 しかし結局は、会わずには帰れない存在なのですから、好きなのでしょうし、正直「イルカにのりたいオヤジ」と、言えると思います……

 むかしの海外TV番組「わんぱくフリッパー」ってご存知でしょうか?
 ガキの時分は現在とは違って、イルカを目にできても(ショーのイルカだけ)触れあえる機会は皆無だったことから、次第に関心が薄れていきました。
 ですが近ごろ、イルカと近くで接する機会が増えたおかげで、とてもフレンドリーな存在に思えるようになり、フリッパーの姿がよみがえってくるようになりました。
 あの目を見ると、こちらからは決して裏切れない、などと勝手に思い込んでしまうのかも知れません……


 この晩は八景島で、8月22日には海の公園で花火大会が行われるそうです。
 日差しのあるうちから場所取りをする方々が大勢いました。

 「金沢八景」と親しまれた景勝地を埋め立て大規模な造成を行った事は、反対の声も多かったでしょうし、財政の負担も大きかったと思われます。
 それでも近場に、水族館・遊園地、ビーチバレーのできる砂浜、バーベキュー施設のある海浜公園があることは、利用者には魅力的であることを、この日の盛況ぶりから理解できた気がします。
 ここが「安・近・短 夏休みのミカタ」であることは確かなようです……


●多摩川「の」花火大会──8月22日(おまけ)

 撮れるのだろうかとチャレンジのつもりでしたが、良くはありませんが何となく撮ることができました。
 二子玉川付近の多摩川を挟んだ東京都側では「たまがわ花火大会(世田谷区)」、神奈川県側では「多摩川花火大会(川崎市)」が、同日の同時刻に行われます。
 これまで「共催」と思っていたのですが、そうではないようで、あくまでも自分たちの「主催」をアピールし合いたいようです。
 打ち上げ地点も600m程度しか離れていませんし、だったら競演もしくは両岸の対抗戦のようなスタイルにしたら、もっと盛り上がるようにも思われるのですが……
 ──自宅近くの丸子橋付近で見たので、細かい様子などは分かりません。

 花火見物に向かう人々の流れというものには(皆さんウキウキ歩いています)、むかしと変わらない風情があると感じられました。
 一瞬ですが「ボクの夏休み気分」に浸れると言うか、ガキの頃にタイムスリップしたような印象がよみがえったような気がして、とてもほのぼのとした気分にさせてもらいました……

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