2010/01/18

いまも変わらぬ、船旅へのあこがれ──大さん橋

2010.1.9
【神奈川県】

 大さん橋(Map)

 近ごろの横浜では、この場所が最も気に入っています。
 さん橋は吹きっさらしなので、風が無いときに限りますが……
 港の地図や航空写真を見ると、その構造は結構デコボコしています。
 でも、さん橋等の凸部には港湾施設が多いので、一般人は立ち入れなかったりします(そんな港を海側から見るために遊覧船があるのですが、その話しは置いといて)。
 小さな港を歩くときでも、進入可能であれば(別に悪さはしません)防波堤等の先端まで行き、そこから港を振り返りたいという願望を持っています。
 横浜港でそれをかなえてくれるのが、この場所になります(前回のマリンタワーと氷川丸の夜景はここから撮りました。三脚でもブレるほどの強風で寒かった……)。

 開港当時(1859年)このさん橋はありませんが、陸地に近い付近を「イギリス波止場」と呼んでいたそうです。
 寄港船の増加と船の大型化等により、その沖に建設された鉄さん橋(1894年)が現在の原型になります。
 その後、映画等で耳にした「メリケン波止場」と呼ばれるようになりますが、それはおそらく敗戦後のことと思われます。


 マンタ(オニイトマキエイ)が口を開いているかのような、正面玄関のたたずまいは、東京湾アクアラインの海底トンネルのように、海に飲み込まれそうな印象を受けます。
 ここから海底には行けませんが、海の向こうに広がる世界へと続いています。
 海を渡って行く、まさしく「海外」の地は、現在でもはるかな旅という印象がありますが、「いつか!」との思いを持ち続けていきましょう。
 以前「クイーン・エリザベス2」(70,327トン)「オーロラ」(76,152トン)等の大型客船が接岸している様子を見学したことがあります。
 どんなお金持ちが乗っているのか? と興味津々でしたが、外出時は普通のカジュアルな服装だったので、拍子抜けしました。
 何を期待していたのか考えると、それこそ時代錯誤的に着飾ったセレブが登場するか、と思っていたんでしょうね。
 われわれの、クルーズ船に対するイメージこそが、時代錯誤的でトンチンカンなのかも知れません。
 ──旅客船「クイーン・エリザベス」の名称は英国女王の意味ではないので、この船は特別な「豪華客船」ではないんだそうです。そんなイメージが広まっているのは日本だけで、元凶は日本のマスコミにあるとのこと。もう、しっかり根づいています(耳障りがいいし、権威に弱い国民性の表れなのでしょう)。


 大さん橋を側面(赤レンガ倉庫付近)から眺めると、構造物の輪郭が波打っている様子が見て取れます。
 この建物の外観デザインには、波がイメージされているそうです。
 露出している外壁や、人の歩くフロアは木の板で覆われ、「全身ウッドデッキ」的な装飾となっており、視覚と足裏の感触からとてもしなやかな印象を受ける建物です。
 その材料には、ブラジル産のイペという木材が使用されているそうです。
 近ごろでは、海辺に限らず町中でも、ボードウォークに接する機会が増えてきました。
 歩いたときの足裏の感触がとても好きで、同じ道なら木の上を選んで歩いたりします。
 コンクリートやアスファルトに比べたら、圧倒的に柔らかな感触を与えてくれますが、上述のような材質に言及されると、それぞれ感触が違っていたかも? なんて、急に分かった風な態度になったりして……
 そんな「歩き比べ」をして、ボードウォークの素材ランキングをしても面白いかも知れません(もうやってる人いるんだろうなぁ)。

 また2カ所ある波の頂上にあたる付近には、天然芝が植えられてあります。
 これがエコなのかは分かりませんが、わたしには、海の上で味わう木の感触や、海の上に広がるグリーンの光景は、海との相性がとてもいいように思え、目と足の裏から全身の緊張がほぐされていくような気分にさせられます。
 もちろん潮風も含まれますが、これだけは弱い日に限ります……


 建物内部では、空間の広さに驚かされますし、大きなガラスが多用されていることも、印象に残ります。
 1本も無いのか分かりませんが、柱を使用していないので空間の広さが実感できますし、ガラスを多用することで自然光を取り込めますから、空間の広がりを一層感じさせる効果があります。
 使用されているガラスは「強化ガラスウォール」と言われ、壁の役目を果たしているようです。
 また、上写真(主眼は左側のガラスに映った絵です)のような景色の変化も演出してくれます。


 とは言え、木材の床ですから、多くの人が利用するロビーでは、結構ギシギシ鳴ったり、デコボコする個所があったりします(上写真では、修復後のように見える個所も)。
 修繕は頻繁になるので大変かと思いますが、部分修復を繰り返しながら、木の感触に味が出てきたらとてもシックになるのでは、と期待しています。
 「床は木材なので…」等の注意看板が数多くあるのは、柔らかな感触を察知した子どもたちが、普段以上にはしゃぐせいかも知れません。
 極端な例えですが、小学校の「お化けが出そうな」木造校舎って、そうやって使われてきたのだと思います。
 わたしも小学2年までお世話になった木造校舎での記憶が、宝物のように好きなので、ボードウォークを歩く度に、木造校舎の記憶を懐かしんでいたのかも?(これ、自分でも新たな発見です)。


 「強化ガラスウォール」が張られた回廊からは、みなとみらい地区の景色が壁画のように展望できます(大きな船が停泊中は船体しか見えませんが)。
 ここには、木製の長いすのようなスペースがあるので、寒い季節や風の強い日でもゆっくりと夜景見物ができます。
 アベックが並んでベチャベチャ(?)お盛んなのは、ご想像の通りです。
 観覧車の時計がこちらを向いているのは、アベックに「早く帰りなさい」というのはともかく、大さん橋に停泊中の船に見せるためだったのか? と思ったりしました(上写真では分かりづらい)。

 大さん橋の建物は2階建てプラス屋上という構造になります(1階駐車場、2階ロビー、ホール等)。
 それだけの高低差があるのに、足裏で木の感触を味わいながら何気なく歩けてしまうのは、この建物がさりげないバリアフリー構造であるおかげだと思います。
 歩道はとてもなだらかなスロープになっていて、どこも必ず手すりが設置されてあります。
 「バリア」という概念を忘れさせ「ゆっくり歩いてもらいたい」とのコンセプトに感じられ、いつ来てもとても素晴らしいと感じ入ってしまいます。
 ──3枚目の写真に階段状の構造がありましたが、イベントスペースのような場所なので、ベンチや階段の役目があるようです。その場所にも、中央にはメインの花道のようなスロープが設置されています。


 近ごろ町中で青い街灯をよく見かけるようになりました。
 青い光は、人の気持ちを落ち着かせる効果があるようで、犯罪防止に効果があると耳にします。
 近所にも青い街灯だけの通りがありますが、どうも寒々しい印象があり、そこを避けたい気分にさせられます。
 ここの青い光は「海へといざなう光」と感じ眺めていたのですが、ふと、赤色系の光は人を興奮させると聞いたことを思い出しました。
 ひょっとしてこれ、アベックが変なことしないためなの?
 それが今どきの『ブルー・ライト・ヨコハマ』だったりしたら、ちとロマンが無さ過ぎという気がします……

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